公的年金制度は、日本国民の老後の生活を支えるために設けられたシステムです。
この制度には、国民年金と厚生年金の二つの主要な柱があり、それぞれが特定の条件下でのサポートを提供します。
ここでは、前編では基本情報から納付方法まで解説します。
公的年金の全体像
リリーさん、年金って公的以外にも色々あるよね?
種類が多くて見分けがつかないよ…
そうね、年金には大きく分けて公的年金と私的年金があるわ。
公的年金の説明の前に、まずは全体像を見てみましょう。
上の図のように、一口に年金と言っても様々な種類に分かれています。
基本的には階層を飛ばすことなく、1階から順番に積み上げていくものだと覚えておきましょう。
次の項目からは、公的年金の内容をさらに細分化して説明していきます。
第1号、第2号、第3号被保険者の違い
第1号~第3号被保険者とは、年金制度における加入者の区分けです。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 | |
---|---|---|---|
対象者 | 自営業者、学生、無職 | 公務員、会社員 | 第2号被保険者の配偶者(被扶養者) |
年齢要件 | 20歳以上60歳未満 | 70歳未満(一部例外あり) | 20歳以上60歳未満 |
保険料 | 国民年金保険料を全額個人で負担 金額:月額16,520円(2023年度) | 国民年金保険料+厚生年金保険料を給与から天引き 金額:標準報酬月額又は標準賞与額の18.30%を労使折半 | 負担なし |
第2号被保険者…雇用されて働いている人はこちらに該当します。年齢要件の例外として、老齢給付の対象年齢に達している場合は、受給を開始すると第2号被保険者の資格を失います。
第3号被保険者…第2号被保険者の配偶者ですが、基本的に収入が無いか一定以下という前提の為、保険料の負担はありません。
第1号被保険者…第2号、第3号以外で、年齢要件が当てはまる人は全てこちらに該当。第1号には扶養という概念が無いため、配偶者も第1号被保険者となります。
第3号被保険者は支払う保険料がないんだね。
その人を扶養している2号被保険者が払うの?
いいえ、個人ではなく公的年金制度全体で負担しているわ。
つまり、第1号と第2号被保険者全員で支えているという事ね。
国民年金と厚生年金の違い
全体図を見ると、公的年金は国民年金と厚生年金の2種類あるみたいだけど、何が違うの?
国民年金は、すべての国民が基礎として加入する年金で、厚生年金は被雇用者とその家族を対象にした年金よ。
厚生年金は国民年金の上に加算される形で、より多くの年金を受け取れるの。
国民年金
国民年金の加入条件は、20歳以上60歳未満の全ての人です。
つまり第1号~第3号の比較表に当てはめたときに、いずれかの被保険者に該当する人は(当然ですが)国民年金の加入者という事です。
厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金となっています。
全体図にあるように、国民年金に加入したうえで入るものです。
保険料は、被保険者と雇い主が半分ずつ負担(労使折半)します。
保険料の納付
第1号被保険者と任意加入被保険者(後述)は「納付対象月の翌月末日」までに保険料を納付する必要があります。
納付方法は次のとおりです。
- 納付書
- 口座振替
- クレジットカード
- スマホアプリ
- ねんきんネット
第2号被保険者は給与から天引きで、第3号被保険者は負担が無いから基本的に納付に関して考慮する必要はないわね。
保険料の免除と猶予
年金保険料、どうしても払えない時はどうするの?
経済的な理由で保険料の支払いが困難な場合、免除されたり猶予期間を与えられるケースがあるわ。
これは、第1号被保険者に限った制度です。
第2号被保険者は報酬に応じて保険料も増減するためで、第3号被保険者はそもそも保険料の負担が無いためです。
免除制度
保険料の免除制度には、法定免除と申請免除があります。
法定免除
特定の生活困難者を対象に、届出により原則全額免除となる制度です。
- 障害基礎年金受給者
- 生活保護受給者
申請免除
低所得者を対象にして、申請が認められた場合に免除される制度です。
免除額は、全額、3/4、半額、1/4の4段階
猶予制度
2種類の猶予制度があり、どちらも申請によって納付を猶予してもらうことができます。
学生納付特例制度
20歳以上の学生で、前年の所得が一定以下
納付猶予制度
50歳未満で、本人及び配偶者の前年の所得が一定以下
産前・産後期間の保険料
これは経済的な理由ではなくても免除されるケースね。
産前産後期間は仕事をすることが困難なため、届出により保険料の支払いが免除されます。
第1号被保険者(国民年金保険料)
原則出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間。
多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間。
第2号被保険者(厚生年金保険料)
産前産後の休業期間中(産前42日から産後56日)及び育児休業中(子が3歳になるまで)は、被保険者と事業主ともに免除される。
滞納と追納
年金保険料を滞納しちゃったら、貰える分も減っちゃうの?
基本的にはそうなるわ。
でも、後から追納という形で期間を取り戻せる制度もあるから、覚えておいて。
保険料を滞納した場合でも、通常は過去2年分まで遡って納付することができます。
特例として、保険料の免除や猶予を受けていた場合は、追納可能期間は10年以内です。
前納
半年から2年分までの期間をまとめて納付する、前納という制度が存在します。
口座振替の他に現金やクレジットカードでの納付も可能で、2年前納した場合は15,000円程度の割引を受けることができます。
任意加入制度
リリーさん、追納をしても満額にできない人はもう諦めるしかないの?
そんな人たちのために任意加入制度という救済措置があるのよ。
これを使って60歳以降も納付することで、満額に近づけることができるわ。
任意加入条件(全て該当の必要あり)
- 日本に住所を有する60歳以上65歳未満の人
- 老齢基礎年金の繰り上げ支給を受けていない人
- 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が40年(480ヶ月)未満の人
- 厚生年金保険、共済組合等に加入していない人
この制度は遡って加入することはできません。
公的年金の給付
年金は現役を引退したら受け取れるんだよね?
基本的にはそうだけど、実は加入者の状況によって、年齢以外の要件で受け取る方法があるのよ。
国民年金と厚生年金で特性も変わってくるから、違いをよく確認しましょう。
給付の種類
国民年金と厚生年金で、それぞれ3種類づつに分けられます。
国民年金 | 厚生年金 | |
---|---|---|
老齢給付 | 老齢基礎年金 (付加年金) | 老齢厚生年金 |
障害給付 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 (障害手当金) |
遺族給付 | 遺族基礎年金 (寡婦年金) (死亡一時金) | 遺族厚生年金 |
- 老齢基礎年金・老齢厚生年金…加入期間や納付額に応じて、原則65歳から支給されます。
- 障害基礎年金・障害厚生年金…病気や怪我で障害が出た場合に支給されます。
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金…被保険者が死亡したときに、残された遺族に支給されます。
公的年金の支払い請求
公的年金については、受給者が市町村の役場や年金事務所に請求して支給を受けます。
偶数月の15日に、前月までの2ヶ月分がまとめて支払われます。
年金と税金
納付
公的年金保険料を支払ったときには、所得税や個人住民税の計算上、その全額が社会保険料控除の対象になります。
老齢給付
老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給した際は、公的年金等控除が適用されたうえで、雑所得としての所得税を納付する必要があります。
障害給付・遺族給付
全額非課税です。
次回は公的年金の給付内容を徹底解説していきます。
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